中曽根工業高校

「呼んだ?」

頭上から声がして顔をあげると、私服の直人が立っていた。

「直人!!」

(え?俺……見えてる?)

(直人、霊感強かったっけ)

「よ、岬。何読んでんの?」

二人の間の椅子に腰掛けた直人は岬から本を奪った。

「ちょっと……」

「何これ、アラビア語?お前、こんなん読めんの?」

「最初にきたとき、ここに置きっぱなしだったの」

岬は返して、と直人から本を奪い返そうとした。

が、逆に手を掴まれた。

「………手、震えてる」

「!!」



岬は、聖也がきたことに、気づいていた。

待合所の大きな全身鏡ごしに入り口から入ってくる聖也が見えたのだ。

思わず、何となく見ていたアラビア語の本に夢中で気づかないように見せてしまった。

「発つの、何時?」

「1時間後」

「じゃーちょっと話せるな」

直人は岬と聖也を交互に見た。

「説教?」

「してほしいの?」

「されたくないよ」

てっきり聖也とのことを咎められると思った岬は、思わず口走ってしまった。

「俺がしたいのは、姉貴の話だよ」