中曽根工業高校

入り口の近くの待合所のベンチに岬は座っていた。

(なんか……フツーにいる)

岬はまだ聖也の存在に気づいていないが、何故か無意識に死角の壁に隠れてしまった。




「……………」





(顔、しっかり見たいな)



意を決し、聖也は岬のとこへ向かって歩いた。


岬は何かの本を読んでいて、聖也のほうには見向きもしなかった。



気づかれるように、聖也はドサッと大きな音をたて、岬の座っている席のひとつあけた隣に座った。

横目でチラッと岬を見た。

岬は相変わらず手元の本から目を反らさなかった。

「……………?」


あれだけ大きな音で横に腰かけたら、別にやましい心当たりがある人間でなくても、気になってしまうのが人間の心理だ。

しかし、岬は相変わらず本しか見ていない。

(そんなに面白い本なのか?)



「……………」




無言の時間が続いた。

岬は本を読み続けている。


ある、妙な考えがでた。



(……俺、生きてる?)



昔、映画で観たことある。

本当は死亡しているのに、本人は死んでいることに気づかず、現世をさまよう話だ。