「俺もそう思うし、直人も思ってないだろーけど…他の奴は完璧勘違いしてるよ」

周りを見渡してみると…心配顔をしている奴もいれば、ヒノケンを見てニヤニヤしている奴なんかもいる。

「…んだ、テメー!」

ヒノケンは笑っている男子に向かってこうとしたが、キノに止められた。

「やめとけって」

キノに止められて、やりきれない気持ちで、そのままドカッと床に座り込んだ。

数学教師は見て見ぬフリだ。

「………ちっ」

「もう…試合近いんだろ、あんま無茶するなって」

もし、教師の前で殴り合いなんかして停学にでもなったら練習試合どころではない。

(……スッキリしねー)


「つーか他の3人は?」

「聖也はサボり。直人は…土屋連れてどっかいった」

「へっ?」

ガラッ…

ヒノケンが聞き返すと同時に、後ろのドアの開く音がした。

「土屋?」

ヒノケンは思わず入ってきた土屋に駆け寄った。

「……………」

土屋は少し涙目になっていた。

「ど、どうした?!」

土屋は黙って目の前のヒノケンに抱きついてきた。

「直人……キレた」

「………………は?」