帰り道。病院から、あたしはゆっくり歩いていた。

涙は既に、消えていた。

あたしより泣いていたのは、東。

別の意味で悔し涙を流していたのは、珠里。

「……ん?」

悲しんでいた最中に、スッとだいぶ遠くで黒い影が映った。

「う…、そ」

あたしはつい、悲しさを消して、嬉しさが明るみに出た。

「聖っ」

聖がいたからだ。

「うーっす。相変らず晴眼だなお前」

「生まれつきだよ。いつ帰ってきたの?」

「今日、一人でな。明日休みだからさ、部活も」

一人なんだ。そっか。

「今日愛心の家に泊まるからなぁ」

「うん。……はぁ?」

「母さん、借金ないから家売ったんだよ。愛心の母さんはいいって事前に言ってたからさ、よろしく」

「はぁ…」

……………。

「うぅ、奏太ぁ。……ありぇ?あれって、愛心?…と、男の子?…しかも笑ってる。奏太が死んだばっかなのに!酷い」

ダダダッ

……………。

クルッ

「どーした?」

「あ、ううん。何でもないよ」

誰かいた気がしたんだけど、気のせいかな。