「お騒がせしました。わたくし、隣りのクラスの古城珠里。その奴隷は、斎藤奏太」

「あの、奏太君怪我してるみたいなんですけど…」

「ほっとけば治るわ」

酷い。

「あたし保健室に…っ」

グイッ

「やめなよ愛心」

「愛海っ」

「あの人、林檎農園に住んでて、大金持ちのお嬢様なのよ。少し前に越してきたみたいだけど」

林檎農園!?

「金で買われたのよ、奏太君は」

酷い。

「行くわよ奏太」

「うぅ」

こんな時、聖だったら。

……………。

「そいつ、怪我してんじゃん。放せよ」

……………。

「奏太君、怪我してるんだよ?」

「は?」

「可哀相だよ」

珠里は鼻で笑った。

「ご心配ありがとう」

「あ…」

あたしは何も言えなかった。

「酷いな」

「最悪だが…」

とめなかったあたしが最悪だった。

不意に、目に入ったのは、天使の翼だった。

ごめん、聖。あたし全然勇気ないよ。