しかし、その後も兄嫁は牛朗に辛く当たり、牛朗の兄のいない間に、
とうとう白い老牛と共に牛朗を家から追い出してしまいました。

牛朗は白い老牛と一緒に当ても無く山の中をさまよっていました。

山の中はとても寂しく、白い老牛だけしかいない牛朗はどんどん悲しくなってきました。

「兄さんとも別れてしまい、私にはもう家族が誰一人いなくなってしまった。
一人は悲しい、一人は寂しい、私にも家族が欲しい・・・」

牛朗の言葉を聞いていた白い老牛が突然、人の言葉で牛朗に言いました。

「牛朗よ、家族が欲しいのならば、ここから東の方にある湖で毎日夕暮れ時に七人の仙女が水浴びをしているから、その中の一枚の羽衣を隠しなさい、そうすれば羽衣の無い仙女は天界に戻れなくなり途方にくれるだろう。
その仙女に心から優しくしてあげれば、お前の妻に、家族になってくれるはずた。」



この白い老牛は、実は普通の牛ではなかったのです、天界の天帝に罰せられて姿を普通の牛に変えられて現世に送られてきた牛の神様だったのです。

牛朗は、湖のそばに家を建て仙女を妻として迎える準備をしてから、仙女が水浴びを
する湖に気づかれないように、仙女の羽衣を一枚隠し、代わりにただの着物を置いておきました。

七人の仙女は水浴びを済ませ一人ずつ天界に帰っていきました。

最後まで残っていた仙女の織女が羽衣を着ようとしましたが、肝心の羽衣がどこにもありません。

織女は、羽衣の代わりに置いてあった着物を着て湖中を探し回りましたが、どうしても見つかりませんでした。

羽衣を無くした仙女の織女は、牛郎の家を見つけ羽衣を探しにやって来ました。

しかし、天界の者はこの世では人間に天界の者だと知られてはいけない掟だったので
織女は、人間の女をよそおい探し物をしていると牛朗に話しました。

牛朗は織女に、探し物が見つかるまでここで一緒に暮らそうと織女に言いました。

地上界にたった一人取り残された織女は、不安と寂しさもあったので牛朗の申し出を
承諾しました。