───あたしは猿岡の頬に手を添えて角度を調節しつつ唇を寄せた。
正確には顔寄せただけで至近距離ではあるけど唇には全く届かない距離なんだけど。
「「「「きゃーっ」」」」
女の子達の嬉しそうな声を合図に顔を離せば、珍しくポカンとした顔のミケと赤くなってる大神くん…
それと…
「あれ…猿岡?」
「………」
猿岡も赤くなって俯いていた。
「え…、…あれ?」
あたし、マズイことしましたか?
もう1度名前を呼ぼうとした時に、ガタンと凄い勢いで猿岡が立ち上がった。
「なっ……何してんだよ梨世!!」
そ っ ち こ そ 。
猿岡が叫んだあたしの本名に、女の子達が首を傾げます。
「え?“梨世”って…?」
「ばっ…!猿岡…!」
「俺はなっ、梨世が女だからって気遣っ……ぐはッ!?」
あたしの右ストレートが猿岡の腹部に決まりました。
「大神くん!この馬鹿連れてって!!」
「…あ、ああ…」
あたしの剣幕に押されて猿岡を引きずるように席を立つ大神くん。
ミケも“やれやれ”と言った感じで立ち上がる。
