あたしの廓-花魁道中-

大将がぼやいていた。

水商売に溺れて、中身が擦れて、見た目だけ派手になりおった…そんな事を言っていたような気がせんでもない、と感づいた途端、女将は逃げ出したくなった。

「あなた、私のお店に働きにきてみる気はない?」

にこり、と微笑む女性の視線に射抜かれてその場に立ちすくんでしまった。

「きっと大物になるわ」
「でも…娘が…」
「娘さんは私の妹に預けなさいな。妹には私から伝えます。」

迫力と恐怖、そしてもうひとつ…自分でも気づかないほどだが小さな憧れという感情が女将の中に芽生えていた。