市役所を出ると、春の麗らかな陽射しがあたしを照らした。

『香月、一緒にいたいよ』

初めて結婚を意識した相手、初めてあたしを母親にしてくれた男。

ずっと一緒にいられると思って止まなかった。

『凜、俺、お前やないと無理やわ』

いつかの香月の台詞が、春風と共に吹き抜けて行って何処かへ消えていく。

所詮は紙切れ一枚のおままごとだった。

四年の歳月も

交わした愛の言葉も

試す為の暴言も

出会った日のときめきも

全てが今は茶番に思えてしまうのが辛かった。