「百合です。よろしくお願いします。」

女将や綾子姐さんに何か言われる前に、毅然とした態度で挨拶をした。

「俺は仁志(ヒトシ)、もう少ししたら出勤してくる真奈美の彼氏って奴だわ」

余計な事まで教えてくれて有難うと言ってやりたい気持ちでいっぱいだったが、敢えて黙っておく。

今は誰彼構わず皮肉りたい気持ちでいっぱいなのだ。

「じゃ、女将、また9時頃に。」
「はいはい、有難うね。」「おう…あっ、百合、ちょっとこっち来てくれるか」

女将にくっついて店の中に入ろうとしていたあたしの背中を仁志さんが呼び止めた。