「はい、着いたよ。ここが凜のお店。牡丹屋」

白い看板に青い文字で書かれた店の名前を、あたしはどんな惚けた顔で見ていたのだろうか。

「じゃ、入るよ。」

木製の黒い扉を開けると、あちこちに花が飾られた綺麗な店の風景が目に入って来た。

「女将、おはようございます。」

カウンターの向こうにあるカーテンを開けて、えりなが『女将』と呼ばれる人を呼んだ。

「この子が凜です。」

カーテンを開けて出てきた女将は、白い留め袖をびしっと着こなした初老の女性であった。