思わずコハクが後ずさろうとした時、少年が顔をうつむかせた。

少年の顔から憎しみの表情が消え、自分を責めるような…悲痛の表情に変わった。


「…妹の………、エディリアの仇を…討つ……」


少年の言葉を聞いた時、コハクはポケットの中がほんの少し重くなった…気がした。

コハクはポケットの中に手をいれ、中に入っていた物を取り出す。

それを一度、強く握るとコハクは足を進め少年の前に立った。


「…コレ、あなたの?」


そう言ってコハクは、あの日拾ったシルバーリングを差し出した。

コハクの掌(てのひら)のシルバーリングを少年は隻眼となった目で見つめ、傷だらけの手でそれを受け取った。


「エディ…リ、ア……」


少年はそれだけ呟くと、シルバーリングを強く握りしめ胸におしつけた。

今ならばあのシルバーリングが誰の物だったのか、コハクにも分かる。


─……あのシルバーリングは、少年が自分の妹“エディリア”に送った物なのだろう。

少年は涙も流さず、ただ目を瞑り続けていた。