ケビィンは、ケルベロスの操縦士である少年に近寄った。
少年は体を椅子に預け、気を失っている。
ケルベロスの緊急停止装置が作動した時の反動で気を失ったのだろう。
少年が軍服を着ていない所を見ると、軍人ではないらしい。
だが、狂乱状態にあったとはいえケルベロスを操作していたのだ。
軍の関係者……あるいは軍士官学校に通っているのだろう。
腕や足、体全体に大量の切り傷と擦り傷。
所々から血が溢れているが、一番酷いのは右目。
右目からは今も鮮血が溢れ、少年の銀髪を赤く染めていた。
「こりゃ応急手当が必要だよな」
ケビィンは自分の服の袖を引き千切り、右目の止血を始めた。
建物か何かの破片が突き刺さったのだろうか。
……深く傷ついた右目はおそらく、もう二度と光を見る事は出来ないだろう。
救護班が来るのを止血をしながら待っているケビィンの目に、何か光る物が見えた。
光の源は少年の右手の中にあった。
少年の右手に握られた“それ”は、シルバーリングのペンダントだった。
気を失っても少年は離そうとしない、それだけ大切な物なのだろうか……とケビィンは感じた。


