一瞬の出来事だった。
しかし、ケビィンには10秒とも1分ともいえるような長さに感じた。
急降下して来たグリフォンの爪は狙いを外す事なく、ケルベロスの緊急停止装置を作動させた。
緊急停止装置により、動力部が止まったケルベロスは糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
緊急停止装置を作動させたグリフォンは、羽ばたくのを止め地面に足をつけている。
今回の作戦で一番負傷したアーマードベアはだらりと両腕から力を抜き、仁王立ちしている。
…辺りには、建物の間で燃え続ける火の音だけが響いている。
そんな中ケビィンが動きだした。
軍服の腰ベルトに銃がある事を確認し、携帯用通信機をポケットにねじ込む。
ケビィンはアーマードベアをしゃがませ、コックピットから飛び降りる。
「…よっと」
何とか着地したケビィンは通信機を取りだし、コハクに呼びかけた。
「俺は今からケルベロスの操縦士の保護に行く。コハクは団長に連絡しといてくれ」
『はい、分かりました』
手短に通信を終え、ケビィンは足を進めた。


