「あの時、あたしが白い機械獣を撃破しようとした時レクス言ったよね?…エディリアを殺さないでくれ、って」
レクスが息を飲む。
……コハクは“エディリア”がレクスの妹だと知っているから。
コハクがそれを知ったらどう思うか、レクスは考えられなかった。
「…あれ、本当なの?」
コハクの問いかけに答えたくなかったレクスは、コハクから目をそらそうとした。
コハクの曇り一つない黒い瞳を見ていたら、嘘なんかつけないから。
しかし、コハクがそれを許す訳もなかった。
コハクが再びレクスの頬に手を添えて、目をそらさせないようにする。
「お願い、答えて」
コハクの真剣な言葉と、真剣な眼差し…。
レクスは、諦めたように目を閉じて言葉を紡いだ。
「……あいつは、自分の名前も…俺の事も忘れてる。だけど…あいつは、エディリアなんだ」
コハクは、レクスの言葉を黙って聞き続けた。
「…声も…言ってた言葉も、エディリアの、ものだったんだ…」
レクスがそこまで言って口を閉ざすと、コハクは手を下ろした。
右目を押さえて、レクスがうつむく。
コハクも、何も言わない。
──…少しの間、沈黙が続いた。


