…通信機の音である。
自分の机の上に置かれている通信機をとり、霧兎が口を開いた。
相槌を何回か打ち、霧兎は通信機を切った。
「…とりあえず、君には処罰を与えなければならない」
「おい、団長……」
ケビィンが口を挟もうとしたが、霧兎がそれを手で制した。
「レクス、君にはコハクの看病をする事を命ずる」
「え……?」
レクスが気の抜けた声を出した。
第一軍師団から脱退させられるか、あるいは牢に入れられる…などと考えていたレクスにとって霧兎が言った処罰はあまりに軽いものだった。
「もちろんコハクとグリフォンが治るまで、君とケルベロスはこの基地から出すつもりはない」
「…そんな事、なんですか?」
レクスが思わず聞き返すと、霧兎が表情を少し緩めた。
「…基地に残って、これからについての事を…よく考えなさい」
レクスは頷き、背を向けると霧兎が呼び止めた。
「あぁ、レクス。コハクは治療を終えて、部屋に運ばれたらしいから部屋の方に行ってねぇ〜」
そう言った時の霧兎はいつものように、にへらと笑っていた。
「おい、レクス!!襲ったりすんなよ!!」
「レクスッ、そんな事したらお父さんは許しませんよ!!?」
ケビィンの冗談に霧兎が乗っかって、ふざけ始めた。
「………。」
レクスはそれを聞き流し、オペレーター室を後にした…。


