「……僕だって鬼じゃない。自分の妹をその手で倒せ、なんては言わないけど…」
そう言って立ち上がった霧兎と、レクスは目があった。
思わずレクスは息を飲んだ。
レクスの目の前にいるのは、いつもの何処かおどけている霧兎ではない。
─……第一軍師団の団長、稲葉霧兎だった。
いつもは見せない、真剣な表情で霧兎が呟いた。
「…それでも、君のとった行動で仲間が傷ついたのは…事実だ」
レクスの脳裏に、さっきのコハクの姿が浮かんだ。
(コハクが怪我したのは…俺の、俺のせいだ…っ)
頭の中では分かっていたはずだった。
しかし、それを他人から言われるとその事実がレクスを押し潰そうとする。
「その事をちゃんと理解しているね…?」
レクスは声を出す事すら出来ず、ただ頷くしかなかった。
霧兎が何かを言おうとした時、オペレーター室に電子音が響いた。


