「……ケルベロスの爪が貫通した所が、リミッターブロック付近だったようです」


ウェゲナーの目が微かに見開かれた。

リミッターブロックとは、機械獣の動力部にかけられた言わば、安全装置である。

これが外れるか、外部から攻撃されるかにより、リミッターブロックが壊れると機械獣は直に内部破裂を起こす。


「なるほど。……なかなか危ない状態だったようだね」
「……はい。整備士から聞いた話によると、一度胴体を分解してから修理し、復元するらしく…」
「修理に時間がかかる、と言う事か」


ゼノスは歯を食いしばり、深々と頭を下げた。


「申し訳、ありませんでした…」
「顔を上げなさい、ゼノス中尉」


席を立ち、今だに顔を下げ続けるゼノスの肩に手をのせた。

ゼノスがウェゲナーの行動に驚き、顔を上げる。


「君は生きて帰って来た、それだけで十分です。……死んでしまえば、それで終わりなんですから」


ゼノスが再び深く頭を下げた。

しかし先程とは違い、直ぐに顔を上げた。


「ありがとうございます、ウェゲナー大佐。……では、フェンリルの様子を見てきます」
「えぇ。ゼノス中尉、君の次の働きに期待していますよ」
「…了解しました」


部屋を出る前にウェゲナーに敬礼をし、ゼノスも部屋を出た。