「あぁ!もうこんな時間!?大変!」
リビングの時計を見たお母さんは、悲鳴のような声をあげて、今まで以上に、せわしなく家中を走り回る。
そんな光景を横目に、あたしは、お皿に雑に盛られたサラダを口に運ぶ。
「ごめん。お母さん、もう出なくちゃいけないから、洗い物は自分でやっといて?じゃあねー…」
最後まで言い終わらない内に、玄関のドアが開き、バタンと閉じる音が聞こえた。
「いってらっしゃーい。」
聞こえるはずもないけど、玄関の方に向かって呟くように言った。
最近は得に忙しいらしくて、まともな会話なんてしばらくしてない。
「ねぇ…、あたしはここにいるんだよね?存在してるよね?」
誰もいない空間に向けて放った言葉が、虚しくあたしの耳にだけ聞こえた。


