思わず、「…あ」と声を出し、目線を自分の胸元に向けていた。
「ボタン。とれてましたよ?」
第2ボタン。あれほど大切に大切に扱っていた、誰にも渡さないと誓った第2ボタンが、
今、僕の学ランからほどけ、少女の手のひらの上にのっかっている。
「ありがとう」
少女の手からボタンを受け取る。
彼女はまた笑顔を浮かべ、僕が目指す方向とは逆に、颯爽と足を進めて行った。
僕もバイトを思いだし、その場から走り出す。
結局バイトは遅刻だった。
けれど、訳を話すと店長は快く許してくれた。
僕は、店長の温かい人柄がにじみ出るこのバイト先のパン屋が大好きだ。
ロッカールームで、ふとしまい忘れ、握ったままの第2ボタンの存在を思い出した。
微かに残る、優しいぬくもり。
僕がずっと握っていたせいなのか、
それとも…少女の体温なのか。
それは、僕にはわからなかった。
END.

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