僕とは差ほど年齢の変わらない少女の笑い方が、
今はもう色褪せてしまった記憶の中の誰かに似ていると思った。
が、それが誰なのか、今は思い出すことができない。
「これで全部?」
「はい、ありがとうございます」
立ち上がって、ケータイを見ると、既に5時を回っていた。
バイトは5時から。完全に遅刻。
店長に怒られることを覚悟し、僕は「じゃ、本当にごめんね。」とだけ言って、
その場を立ち去る。
しかし、少女の「あっ!!」という叫び声に、その動きを止められた。
今し方いた場所に振り返ると、彼女は手を『グー』の形にして、僕の胸のあたりに突き出している。
「…?」
そっと開かれた手のひらに、やさしく包まれていたものの正体が見え始める。

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