悔しいかと聞かれればその通りかもしれないが、口にしてしまえばそれはただの妬みにしかならないことを知っている僕は、

わざわざ自分の格を下げてまでその言葉たちを口にしようとは思わない。



「…麻人。俺のことその名前で呼ぶなって、何回も言ってる気がするんだけど」



睨むような目つきで(実際は睨んでなんてないが)麻人に言うと、彼は得意の空笑いを返してくる。


へへっと笑い「そうだ!」と話を切り替える麻人に、僕は若干の呆れを抱きつつも、

それが奴のいいところでもあるのかもしれないと、お人好しな僕はそんなことを考える。


梅雨はまだ始まったばかりで、じめじめと僕たちを包む込む。