オレは彼女の言葉をこの耳ではっきり聞いた・・・

だけど聞き返す事はしなかった・・・

何かすごく重大な事を言っているなと他人事だった。

本当は予測していた以上の言葉なので、頭の中を文章が駆け巡るだけで理解して受け止める事ができなかった。

「子供って・・・ 姉さんの・・・ 
生んだって誰が?・・・ どうやって・・・ 何をしたの? だっておまえ真子じゃん・・・」

ハンドルを握る手に自然に力が入ったが、
彼女の言葉を理解するのに必死で驚く事も取り乱す事もしなかった。

「本当は初めてユウジに会わせた時に、正直に言うつもりだった。だけど何故か言い出せなくて・・・ 隠すつもりじゃなかった、信じて・・・」。

ふと目をやると真子は大粒の涙を流しながら泣いていた。
オレは涙に滲むその顔を見たくなくてすぐに顔を背けた。

その後も真子はずっと何かを話していたけど、運転をしながらただ聞いているだけで
そのほとんどは頭に入ってなかった。
胸に詰まった思いを吐き出すように語った真子は、ひと呼吸置いて

「ユウジとは何もかも違う・・・ だからもう会えない」と言った。

その言葉を聞いた後、オレは
「勝手だな・・・」とだけポツリ言いうとハンドルを切り車をUターンさせた。