オレはそのワキ毛を見た瞬間、思わず背もたれから前方に乗り出してしまい、
それを見たマミは、すかさずヒジ鉄を喰らわせながら
「変態!」とオレの耳を摘んで裏声で叫んでいた。

映画が終わって外に出てからもオレはワキ毛の事ばかり話し、
「やっぱり身体に生えてくるものを剃る方が可笑しい、マミおまえも生やせ!」
などと言ってからかいながらヒロの店まで行った。

店でヒロに会うと真子と別れた事を話し、

「今日は特別にドラえもんに頼まれてドラミちゃんの世話をしてる」と

マミと二人でいる事を説明すると、ヒロは腹を抱えて大笑いをし、ドラミなどと言ったオレよりもあまりに笑いすぎるヒロにマミはいつもの蹴りを入れていた。
オレがヒロと話し込んでいる間、マミは勝手に店内を物色し店のオリジナル模様のパスケースを買っていた。

仕事中のヒロに遊びのオレがあまり長話しをしても悪いと思い店を出た後は、
商店街をうろついてお好み焼きを食べた。
食べ終わって当然のようにオレがお金を払おうとすると
食事代はすでに清算されており、おかしいなと思ったオレはマミの方を振り返ると
ウインクをしながら変なポーズをキメてVサインをしていた。

本人は雑誌のグラビアのようなポーズをキメているつもりだろうけど、
オレには縄文式土器の人形がVサインをしているとしか思えなかった。

おそらく勘定はトイレに行ったすきに済ませたのだろうが、
オレは女とのデートでお金を払って貰ったのはこの時が初めてだった。

このままではカッコがつかないと思ったオレは店を出てから
「いくら払った? 出すから教えろよ」と
何度も聞いたがマミは
「ワキ毛マニア~」などと繰り返すだけで最後まで金額を言わず、
結局、日が落ちる頃まで街をさまよってから帰りのバスに乗った。

バスに乗るといきなりマミは最後部まで走り出し「ココでしょう!」とオレがいつも座る座席を確保してくれた。