だけどやはりこの日を境にオレの心の中に薄い霧のようなものが広がり、
真子を見る目が変った。

真子はオレが聖子とつき合っている事を承知の上で手紙を書き、寄りを戻したいと言ったのは明白だ。

「横恋慕?・・・」 

そんな単純なものじゃない。

例えるなら自分が散々遊んで飽きてしまい、捨ててしまったオモチャがあるとする。
そのオモチャを拾った人がとても大切に扱い、しかも毎日楽しそうに遊んでいるのを知る。
そうすると一度は手放したはずのオモチャでも、気になり始めもう一度手にしてみたくなる。

悲しい現実だけどオレがそのオモチャだ。

捨てたはずの恋・・・
やはりあの時のバスの座席の位置、そしてあの時の涙・・・ 
あの瞬間さえなければ・・・。

何度も後悔してあの瞬間を悔やんでみても、
その後の行動は誰かに指示されたわけでもなく、オレが自分の意思で行った事だ。

たとえオモチャのような扱いをされたとしても誰も責める事などできはしない。

ただこの頃から確実な終わりに向かって時は進んでいると思った。