次の日はいつものように学校に行った。
虎と鷹の刺繍入りのお気に入りの学ランにボンタン、リーゼントをキメていつもと変わらぬカッコで登校した。

変わったのはオレに恋人がいなくなった事だけだった。

教室に入るとマミに「真子と別れたから誰か紹介してくれよ」と笑いながら話すと、マミは自分を指差し
「どう?」
とポーズを取って見せた。
オレは片手を振りながら「無人島で二人きりになった時は考えとく」と冷たく言い放つと、マミは「もう一回言ってみろ!」と背中を何度も殴ってきたので、すかさずオレも「おまえ普通はなんで別れたのとか聞くのが先だろ!」とケリを入れていた。
もちろんお互いふざけてジャレているだけだけど、この時「マミはすでに知っていたな」と思った。

マミは笑うとエクボの可愛い背の小さな子で、男連中の間では結構人気があった。
だけど小学生から知っているせいかオレにはどうしても恋愛の対象として彼女を見る事が出来なかった。

真子と別れてからは有り余る時間をギターの練習に注いだり、ワル仲間と悪さばかりした。
でもそれは胸に空いた風穴を埋めるためで、何かを忙しく行っていないと立ち止まってしまえば真子の愛しい笑顔が追いかけてきそうで恐かった。

真子を忘れるために他の女とテキトーに付き合うみたいな事もしなかった。
多分、オレが望めばそれはできたと思うけど、やっぱり自分の心の中に彼女がいる以上、
次の女に悪いと思っていた。

この頃生まれて初めてアルバイトをやって自分でお金を稼いだ。
そのバイトとは家の解体で土足のまま室内に上がり込み、金属バットやバールでひたすら壁や柱をブチ壊す。
一通り家の中で暴れ回ったあとは通し柱をトラックで引いておしまいという単純な仕事だけど、胸のモヤモヤを吹き飛ばすには持って来いのバイトで、稼いだお金もその日の内に派手に使い切った。

そんな日々を過ごしながらやっと一人に慣れた頃、真子から手紙がきた。

そこには「もう一度やり直したい」と書いてあった。