真子を待ちながらボンヤリ校庭の方に目をやると雪は地上から天に向かって舞い上がっていた。
校舎と校舎の間にある校庭なので左右からの風がちょうど校庭の真ん中で衝突し、そのまま天に向かって吹き上げるようなかたちで、その風で飛ばされながら天へと舞う雪は幻想的で美しかった。
慌てて窓に顔を近づけて校庭を見下ろすと、雪が真下から噴水のように吹き上げていてなんとも言えない美しい光景だった。
幻想的な自然のスクリーンに見とれていると胸につかえたモヤモヤが少しずつ消されていった。

「オレはなんてちっぽけな事で悩んでいるんだろう・・・ ひょっとしたら真子は年末から風邪でも引いて寝込んでいたのかも知れない。もしそうだったら年賀状突き返えしたりして悪い事したな」なんて後悔し始めていた。

真子を心から愛している以上、冷静な判断なんて出来るはずもなかった。

結局、愛している人を責める事が出来ずに自分の悪いところを無理に探し出し、自分を責める事で納得しようとしていた。
まして目の前には幻想的なスクリーンが広がっている。
彼女を許す条件は揃いすぎていた。

そこに「ゴメン」と真子がやって来た。
その「ゴメン」は遅れての? それとも年賀状? ・・・もうどうでもよかった。
オレは彼女に「こっちに来て」といい目の前に広がる雪のスクリーンを見せた。
言葉はいらなかった。
二人で肩を並べながら校庭を見下ろしていると、地上から舞い上がる雪の世界へ吸い込まれていきそうな感じでオレ達は時間が経つのを忘れていた。

「雪の世界か・・・ 二人なら行ってみたいな」と本気で思い、真子の横顔を見つめていた。
どれくらいの間見つめていたのだろう・・・ 吹雪が弱くなってきたところでオレの方から「帰ろうか?」と言った。
階段を降り外に出ると風が収まった分、雪は深々と降ると言った感じで辺りは白銀の世界だった。
真子は傘を広げ照れながら「入り」と言ってくれ、
オレは傘を持つ真子の手を自分のズボンのポケットに入れ変わりに傘を持ってあげた。

何故か意味もなく他人の足跡を踏まずに帰ろうという事になり誰も歩いていないような
所を選んで歩き、車の進行にはかなり迷惑な相合傘の二人だった。