私は何にも言う言葉が見つからなくて、足元を見た。
真っ黒なコンクリートと、それとは反転的な真っ白な自分の靴が目に映るだけ。
これといって面白いものなんて無いのは当たり前。

「ははっ、スマンなぁッ!!こんな話してもうて」

でも、なんかリアルやったからな。

「占い師の言った事、信じてるの?」
「いや、信じとらせん。けど、そうなるかもしれへんなぁ、てちょっと思っただけや」

そう言う志黄を殴ろうと思ったけど、体が上手く動かなかった。
かわりに、その大きな図体に自分の体を押し込める。

「何や?どうした?」

まるで子供を慰める様に、頭をよしよしと撫でられる。

「‥‥でよ」
「ん?」
「そんな事、簡単に言わないでよ‥っ!!」

考えるだけにしてよ、そんな事。
さっき、『本当にあと2週間しか生きられんかったら、どうする?』って訊かれた時、答えは決まっていた。

ずっと傍にいる。
1分も、1秒も、離れてなんてあげない。

そう思った。
でも、信じたくないから。
だから言わなかった。
言えなかった。
“そうなったら”なんて考えたくない。

あんたの事が大好きなんだから、大切なんだから。



今から咲き誇ろうとしている桜の様に、尊い存在なんだから‥‥。



この時はまだ、何も知らなかった。知ろうとなんてしなかった。
でも‥‥
『夢』を見ると、何を信じるべきか知らされた。

もう、動き出した。
止まらない、止まれない。





死までの残り時間。