あたしは、
まだ夕木が過去を気にしているのかと思い、



「多分さ、健斗くんは……言葉でうまく表せないんだよ。

 だけど、夕木を大切にしたかったんだと思う。

 精一杯……健斗くんなりに、夕木を大切にしてたんじゃないかな???」



そう言った。
すると、夕木は微笑んだ。



「もう、過去の人だし、大丈夫。気にしてないよ。

 分かってるつもりだったんだけど……。

 健斗の考え方とか、すべてを。だけど、うまくいかなかったや」



軽く笑ってから、
もう帰ろう、と夕木は言って……大きな影をつくった校舎を、あとにした。