今日もいつもどおりの場所に、いつもどおり陣取る。絵を並べ、客が訪れるのをただ待ち惚けていた。いや、正確には、あの自殺志願者の女を待っていたのだ。

彼女は来るだろうか…。不安と期待が入り交じって、商売どころではない。複雑な心境を抱えたまま僕は待ち続けた。


結局、夕方になっても彼女は来なかった。そして、絵も売れなかった。何も変わらない平凡な1日に、自分からは何も変えようとしない他力本願ぶりに、流石に溜め息がこぼれた。

片付けて帰ろうかと、顔を上げるといつの間にか彼女が立っていた。気配を全く感じなかったのは、それほどまでに自分に失望していたからだろう。

「よかったぁ。ギリギリ間に合ったね。」

「いや、もう帰ろうと思ってたとこなんだけど。」

今日も彼女はキレイだ。荷物をまとめようとして持っていた絵を危うく落としかけるほどに。

「ちょっとやることがあってさ。こんな時間になっちゃったんだ。」

「やること?何かあったの?」
あまりにも直球な質問をしてしまったことに気付いたのは、家に着いた頃だった。

「教えてあげな〜い。自分で考えなさい。」

「暴力団を壊滅させてきたとか?」

「そんな過激な女に見える?はずれ。」

「じゃあ、見たいテレビを見てきたとか?」

「う〜ん、なんかリアルだけど違うよ。ヒントは私らしいもの。」

まさかとは思ったが、一応聞いてみた。

「自殺未遂とかじゃないよね…?」

「正解!君も私のことわかってきたみたいだね。」

そう言われて心なしか嬉しかったのは気のせいではないだろう。