「お願いよ!!
大事な取引先のご子息なのよ」

「あちらからの願いだ。
頼む!!」



父と母が一生に一度見られるかどうかぐらい、必死に懇願している。




そこまで小さいわけでもないが、大きいわけでもない会社の経営者である父。

いつもは多忙な父が写真を撮ろうなんて言うから、何か降ってくるんじゃないかと思いながら連れてこられた先は...





「場所、違う気がするんだけど...」



一生来ることは無いんじゃないかと思うくらいの
超高級料亭。

普段はカジュアルな服を好む私は
強制的に女将さんに着物を着付けてもらう。

多分、絶対着ることは無いだろう艶やかな着物だ。

化粧もしてもらい、人形のごとく通された和室で座って、父と母の話を聞き流す。