「海に向かってね。父さんと実を追い込むんだ。母さんはとても怖かったよ。死神に見えた」


 夜の海は怖い。そして、夜の母さんも怖かった。眼がイッていたから。


「ど、どうなったの?」


 そう雄太は聞いてくる。
 私はニコリと笑う。


「父さんも、父さんの母さんも生きてるだろ?無事だったってことさ」


 よく生きられたな、と思う。


「父さんが母さんの腹を思いっきり殴ってね。逃げ出したんだ。あの時だけだね。親に反抗したことは」


 私は死にたくなかったから。死ぬなら一人で死ね、と母さんに言ったと思う。我ながら最低の一言だなぁ。