「そうか。人間ってのはな。本当に絶望してしまうと死ぬことしか考えられなくなるみたいなんだ。お前はまだ大丈夫なのかもしれないな」


 私は小さい時、毎日死にたいって考えていたものだ。


「さて、話を戻そうか。母さんはね、そのとき死ぬことしか考えられないほどキツかったみたいだ。もともと後向きな考え方の人でね。何もかもを悪く考える人だった。あのときは確かにどん底といえる生活だったし、夢も希望も持てなかったかもしれない」


 雄太は泣き終わっていた。
 こちらの話を真剣に聞いている。


「そんな母さんが考えたことは心中さ。心中の意味はわかるかな?」


 フルフルと雄太は首を振る。まだ知らないか。


「一緒に自殺することだよ」


 わけもわからず車で行き着いた場所は暗い海だった。
 崖の上に車を止めて、そのまま海に飛び込ませようと母さんに背を押されたな。