奏。‐カナデ‐





いつものように近づいて、今日は黙って隣にイスを置いて座った。

あたしの大声で起きないなんて、相当疲れてるのかな。

「ふ・・・」

自然と笑みがこぼれる。
いつものあの、見下すようなムカつく瞳とは全然違う、純粋無垢な寝顔だった。


生意気に返ってくる返事も、生意気な笑顔もあたしの心を温かくするけど、今の片瀬の無防備な寝顔にはまた違う、温かな気持ちが心に湧いてくる。




あぁやっぱ、好きだな


大好きだな。


「・・・悠人・・・・・・」

不意に出た言葉。

・・・・・。
あたし、何1人で言ってるんだろ・・・っ

急激な恥ずかしさがあたしを襲う。
1人であたふたしてるこの姿は、ハタからみたら変人だろう。

「~~・・・・・・。」

大丈夫。
寝てるから聞こえてないし。


すると、ふいに片瀬が身動きした。

「あ―・・・・・」


言葉を止めた。
いや、出せなかったというべきだろう。