着替えて外を出ると、意外に人が街を歩いていた。


皇居の位置する場所と、この家は同じ上京区。


天皇の御公務は中央区の京都御所で行われているが、人々は上京区皇居に向かって歩いている。


現在朝9時少し前。


11時の一般参賀に向かっているのだろう。行き先は同じなので、天皇の血族もまた流れに乗る事にした。


しばらく進むと、皇居前大公園入口に差し掛かる。


京都警視庁の警官と、皇族近衛警備部が大勢の参賀客を捌いていた。


「あのぅ…お疲れ様です」


多香子が辺りを伺いながら、胸ポケットから菊一文字の刻まれた風車の輪郭の紋を、こっそり近衛警備員に呈示する。


警備員は驚いて頭を下げた後、警備部詰所に案内してくれた。


ばたばたとする警備員。


―――そんな気を使わんでも…


なんか非常に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、成二は思わず視線を落とした。