「…一体、何があったの?」


千鶴の問いを、螢剣一郎[ホタル ケンイチロウ]が拾う。


「敵が現れた」


「敵?」


パーカーのフードを取りながら剣一郎が話を続ける。


「200年前。全ては200年前にボクらの先祖が真実に辿り着く前にバラバラになったコトが全ての始まりだよ、千鶴さん」


200年前と言う言葉に、千鶴は心あたりがあった。それは、幕末の京都に刻まれた、決して表に出る事の無い闘い。


「まだ過去に決着がついてない。私達の代で全てに終止符を打たなきゃならない」


霞結衣[カスミ ユイ]は紘子を起こさぬように優しい声で剣一郎の言葉を紡ぐ。


「…未だ敵の姿しか捕えてないね、俺ら」


直仁の言葉は正論。


200年前に残された文献からも“敵”の情報は記されていない。


「如月は小龍沢の下を離れ、西洋に渡りました…鎖国が終わりを告げた時、外へと逃がした敵を監視するために…。そして今、切望し続けたこの国へ…護るべき一族の下へ帰還を果たしました。そして…闘いに終止符を」