「じゃ、行こうか」


多香子が手をポン、と合わせて微笑む。


よく見てみれば、多香子は既にスーツ姿。コートと手袋を着ければ、何時でも出発出来そうだ。


成二は一応もう1人の姉を見たが、言わずもがな、紘子も完璧にスーツを着こなすばかりでなく、既に外に出れる格好だ。


―――しまった。


寝坊したのが少し悔やまれる。


2人の姿を見て、すぐに部屋に戻って制服を着ることにした。


「すぐ着替えてくる」


リビングから出て、階段を昇り、自身の部屋に向かう。


姉貴2人を待たせるのが嫌だったから、自然と足早に部屋を目指した。


―――任務さえ無ければ…


脳内に昨晩の出来事を思い返しながら思った。


それと共に、どうしようもない寂しさが胸一杯になる。


その気持ちのやり場が無くて、制服のブレザーを手にしたまま、その手を力強く握り絞めた。