明奈が指をパチン、と鳴らす。


ナイトドレスがふわっと揺れ、すらっとした白い脚が垣間見える。


同時に、蜘蛛がギシリと音を立てて動きを止めた。


「せぇじ、行ってきなさい?」


明奈が成二をちらっと見る。


明奈を抱いて漆黒の頂を駆け上がった為に疲れがあったが、何か言えば怒られる気がしたので、成二は黙って向った。


「ったく…」


換装した一振の大剣を左手で握りしめると、あの事件の日、多香子の言った言葉が頭に過ぎる。


“斬る重みを知りなさい”


「…」


剣を己の手で振り上げ、蜘蛛の静止した身体に一文字を刻む。


その手には今までにない重みがまとわり付いた。


「ギニィアァアァァァァァァ!!!!!!」


大剣から影が糸を引く。


影を振り払うと、大剣はまた輝きを取り戻したが、斬った感覚は手に残る。


違和感がやたら残っていたが、康介の怪我の事もあって、本部にすぐ連絡した。


「こちら春日班。現時刻を以て任務完了。一名負傷者有り。本部に帰還する」