「カズ、はるか?アナタはココを離れていいわ。成二を送ってもらえる?」


千鶴が胸の前で腕を組みながら指示を出す。


和弥とはるかは頷き、成二を送る為に車に乗り込んだ。


落ちる寸前までに迫った太陽が、最期にまばゆい明かりで街を染める。


車の中から見る千鶴の考え込む姿を見て、一瞬、紘子の姿が重なる。


さっき退いた頭痛と冷汗が、再び成二を襲う。


「成二、大丈夫かい?」


後部座席に座る成二に、ルームミラー越しに和弥が声をかけた。


「え?…大丈夫ですよ」


その答には何も返答は無く、和弥の溜息が漏れるのだけが聞こえた。


「…すぐに着くからね」


和弥の言葉は短かったが、姉達の言う様な、温かな言葉だった。