「成二」


姉が弟の瞳を覗き込む。


「切る重みを知りなさい」


―――切る…重み…?


「成二の闘い方は、臆病な弓兵と同じか…それ以下だよ?」


そう言われた事にショックを隠せない表情を浮かべる。


…確かに、多香子の言う事に間違いは無い。剣をただ放つだけの闘いも、また事実だ。


だが、成二の闘い方だって今まで通用してた。


その葛藤が成二の心をギュッと締め付ける。


「成二…」


―――あ…


血だらけの成二を、多香子は抱きしめた。


「…ごめんね、今、辛かったね」


優しい手が、頭に触れる。


「成二はね、今まで頑張ってきたよ。でもね、いい?自らの手を汚さず闘うのは、小龍沢の運命から逃げ出す事になる…」


多香子は顔を真正面にして、額をコツンと合わせる。


「成二は優しい子だから…自分の手でとどめ、さしたくないのわかるよ?でも、闘いに身を置く以上、自分の罪を、その両手に背負いなさい?そうやって、強くなりなさい」