「成二?朝だよ!」


数時間前に新年が始まったばかりの冬の朝に姉の声が聞こえる。


「ん…」


首都・京都の冷え込みは意外と厳しいもので、ベッドから出る気が失せるのは毎朝の事。


「宗家に挨拶行くわよ!」


―――あ。


姉の言葉に成二は反射的にベッドから跳ね起きる。


―――やっば…


時計を見ながらいつもの日課通りに右手で髪をわしゃわしゃする。


―――宗家か…


寝起きの少年、小龍沢成二…表の名・小沢成二が挨拶に行く“宗家”とは、神々を統べ国を統治した、国の象徴たる一族…天皇一族の家系を指す。


小龍沢家とは平たく言えば親族の系譜であり、血筋の本流であるから、年始に本家に挨拶に行くのは礼儀だ。


眼がしぱしぱするし、身体もだるさが残ってる。だが、そう言っても事は始まらない。


彼は身体を起こし、姉の待つリビングに行くことにした。