今宵、月の照らす街で

紘子の予想通り、多香子は焦っていた。


自らの風が使役され、更には自らの力を越えていた事が信じられなかった。


だが、かと言って迷いを抱きながら闘えば、それは大きな代償を払う事になる。


相手が月那主宮当主なら、尚更その代償は命という事もある。


廉明の振りかぶった月輪菊一文字を受け止め、多香子の表情は曇った。


今まで見切っていた小龍沢の瞳、光風霽月でも、やっと間に合うレベルのスピードで攻め続けられている。


また、風の障壁を纏っても、風が陰によって同化し、風までもが切り裂かれる。


頼みの綱である八龍を纏った攻撃を加えていても、甲冑の上からでは有効な手とは言い難かった。


―――甲冑を破って直撃を加えられたら………!


そう考える多香子の横から、優しい風が吹き、廉明が吹き飛ばされる。


多香子の左右を見ると、両脇で紘子と成二が左右対照に脚を伸ばしていた。