「いい加減、くたばってよ」


「てめぇがな!!」


白炎と黒炎の衝突。


それぞれの繰り出す刀がぶつかる度に、それは烈しく燃え上がるが、互いの刀は決して折れない。


折れるどころか、刀が欠ける事すら無い。


刀を媒体とした、気と気の闘いは、一進一退の攻防を見せる。


アルファの、自在な刀捌きは、曲芸の如く手を軸とした動きを中心としている。


絶えず回転する刀から不規則に現れる剣閃。右から首へ向かう剣を防げば、反動を利用し、反対の胴体へ、更に防げば一歩引いてから突きへと転じる。


本能に抗うことのない、不規則な型。


剣一郎も隙あらば急所を狙うが、その刀は間一髪で空を切る。


かつてない剣豪との決闘に、剣一郎は焦りの色を隠せずにはいられない。


そんな時、耳に入れたままのトランシーバーが、千鶴と紘子の会話を拾う。


―――室長!!


一瞬、剣一郎の脳裏に、多香子の言葉が浮かんだ。


“小さくも激しき焔。激しくも冷静なる焔。確固たる決意と、秘めたる意志。蛍は優しい灯だけど、暗闇で輝き続ける道標。みんなが迷ったら、活路を拓くのは凪でも春日でも如月でもない。あなたの役目だからね”