「水を差すようで悪いんだけど…」


結衣が様子を伺いながら、恐る恐る手を挙げた。


「東京から京都まで何で行くの?車とか新幹線じゃ、あまりにも当然すぎて妨害されるのがオチだと思うケド…」


「確かにそうよね。一刻を争う事態でもあるし、陸路じゃ時間がかかるわ」


結衣の意見に、千鶴も考え込む。千鶴はそのまま多香子に視線を移した。


多香子は答えを準備していたかのような、平然とした表情を浮かべている。


「策はあるよ?だから、みんなをこの霞ヶ関庁舎に呼んだの」


多香子は足を進め、敢えて人々の中に入り込む。そして、両手を祈るように合わせた。


それが鍵となり、多香子を中心にした円が淡い光を帯びて浮かび上がった。


「姉さん…これは…?」


「代々、小龍沢家は蓮舞天照院家を護る盾であり、矛でもあった。これは蓮舞天照院の有事の際に、向こうに瞬間的に移動できるものよ」


全員の視線が床に落ちた。


「ただ、陰の影響で何処に飛ぶかは予測できないの。だから、みんな警戒しておいてね」


床に照らされた紋章の色はだんだんと深みを増す。


深くても、鮮やかさを失わない空色。


それは23人を彩り、やがて強い光で、その場は白に包まれた。