対策室メンバー全てに連絡が届き、全員が霞ヶ関の崩壊した宮内庁庁舎に集まった。


本来、全室員はエージェントも含め計154人。


しかし、そこにいたのは、たったの23人だった。


最後に到着した多香子にとっては、目も当てられない事態だった。


いくら嘆いても、死んだ者は戻らない。


むしろ、死者への執着心が陰を、魔を生み出す事は、十分理解していた。


「みんな。生きててくれてありがとう」


姉の凛とした言葉と気丈な振る舞いとは裏腹に、少し曇った瞳が浮かんでいたのを、紘子と成二は見逃さなかった。


「他の対策室は月那主宮に制圧されたの。もう、私達しか残ってない。だから…」


「行こう。京都に」


先に続く言葉を、成二が繋げた。


「何が正義とか語るつもりは無いけど、ここに姉さん達が守ってきた平和は無いよ」


「…そうね」


明奈も一歩前に踏み出した。


「前長官殿には、やたら仮があるしね」


真剣な瞳。その根源にあるのは、春日明人と梅宮カオルの存在に違いない。


たった23人なれども、修羅場をくぐり抜け、生き抜いた精鋭達。


それは意志を一つとし、矛先を一つに定める。


これを見た剣一郎は、ふと親友の家の口伝を思い出す。


“土を司りしは確固たる決意”


戦線を離れても、親友を体現した自分のチームに、剣一郎は強い力を貰ったような気がした。