崩れた柱が結晶に変わり、宙を舞っては静かに消え去る。


「京介さん。千鶴さんたちも作戦完了したようです」


京介は煙草に火を点し、漆黒の空を見つめた。


「…京介さんは何故闘うんですか?」


吐いた言葉に、白い煙が交じる。


「…理由…か」


唐突な問い掛けに戸惑いの表情を浮かべたあと、ククッ、と自らを嘲笑する京介に、桜は口を開いた。


「八龍と言えど、この闘いに私情を持ち込むのも有りだと思います。私は両親の敵討ちを目的にしてますから」


「敵討ち…か」


京介は次の柱を目指すべく、地面を蹴る。桜もそれを追った。


「今となっては半鬼と呼ばれる存在が、200年の時を経て再び現れた15年前に俺は両親を殺された。半鬼にな」


風を切って走る中、その風圧と明かされた真実の重さが、桜の口を塞ぐ。


「半鬼が月宮に作られた存在なら、俺も敵討ちかも知れないが…魔や陰を狩る度に快楽に変わった。昔、両親を守れなかった、腑抜けな自分を消してる様でな」


やっと横に並んだ桜が、京介の顔を横目に見る。


ハッキリとはしなかったが、悲哀に満ちた瞳をした京介が、桜の眼にはとても小さく映った。