今宵、月の照らす街で

人と、人為らざるモノとの闘いが始まる。


いや、それは既に闘いというレベルでは無かった。


最早、戦争と言っても過言ではない程の、魔の数の多さ。それに圧倒されず、ひたすら魔を狩る八龍の姿は、敵からしたら悪魔にも見えているのかも知れない。


「お前、“術士”か」


京介が、ひたすら印を結びなら魔を祓う桜に声をかけた。


「ま…まぁ…」


「じゃあお前はそこに居ろ。邪魔な奴は俺が消してやるよ」


京介は、そう言い残して空を舞う。


「…もう」


桜は呪符を目の前に並べ、長時間詠唱に入る。隙の生まれた桜に、鬼神、半鬼が群がる。


「誰に断って近付いてんだぁ?」


鬼の形相で、鬼そのものの頭部を掴む京介の姿が、桜の視界に入った。


そのまま鬼神の頭を地面に叩きつけ、空いた片手で地面に気を流す。


鏨家の力で、地面に眠る金属元素が共鳴し、合金の刃が飛び出す。


「………!!」


鬼神の顔は無惨に貫かれ、やがてその動きが止まる。


「ハーッハッハッハッ!!!」


京介の笑い声が空に響く。その姿に悪寒が走った桜の詠唱が一瞬、止まった。


それでも構わず、京介は魔を消し続ける。桜も我に返り、詠唱を完了させた。


「拾捌ノ印!金木犀[キンモクセイ]!!」