今宵、月の照らす街で

「あった!!」


明奈と紘子の視線の先に、紅の柱がそびえ立つ。その周りには、鬼神や半鬼、鬼蜘蛛と言った、陰の上位種と魔の存在が蔓延っていた。


魔の存在が、二人の姿に気付く。


「オオオォ…!!」


鬼の上半身と蜘蛛の姿を持った存在が唸り声を上げる。


「鬼蜘蛛…中々手強い奴が出てきたわね」


「結構な数ですね。明奈さん、そっち任せていいですか?」


互いに言葉を交わしながら、背中を合わせる。


「あらぁ、誰に頼んでるのかしら?」


「ふふふ…そうですね」


「冗談よ。じゃあ、また後で会いましょ♪」


そう言って二人は、魔の群れへと再び走り出す。


「「葉月、待っててね」」


互いに離れながら、同じ言葉を漏らす。そして明奈は鬼蜘蛛と、紘子は鬼神と対峙する。


紘子が空間からチャクラムを喚装した。二つの紅いそれが、手で空色に輝く。


「さぁ、小龍沢には私も居るって思い出させてあげないとね」


小龍沢の風の気が強くなり、突風が吹き荒ぶ。その風を受けた鬼神は、紘子を脅す様に吠える。


紘子の視線の先で、鬼神の腕から巨大で鋭利な爪が伸びる。肩からは新たに腕が生え、通常の鬼神からは考えられない姿に変わる。


「リハビリには相応しい相手ね。手加減無く潰せるわ」