闇が深くなる中、千鶴と結衣は深紅の柱を目指す。


「千鶴」


千鶴を追いかけるように走る結衣が声をかける。


「200年前。当時の八龍当主は命を賭けて闘った。それは事実であり、私達に伝わる史実」


「…そうね」


「その黒幕は三柱が一角、月那主宮。目的は簡単に言えば、世界征服?」


「ええ」


「千鶴は、どう思う?」


千鶴は、風が流れるで振り向いた。


「私が考えているのは、全力で多香子の敵を喰らう事。結衣は?」


結衣が立ち止まる。


「私もそうあるべきなのに…少し運命が憎いかも。よりによって、私の代にツケを払う事になるんだよ?それに闘いの運命は、たくさんの人を殺すから…」


千鶴は、優しく、せつなさの秘められた結衣の瞳に吸い込まれる様な感覚に陥る。


―――結衣は優しすぎる。


昔からずっと感じていた言葉が、再び脳裏に浮かぶ。それは、現在八龍を担う全員に共通する長所でもあり、短所でもあった。


戦場での優しさは、時に命取りになり、その優しさを敵が見逃す事は、ない。


「たくさんの人間が死なない為に、私達は居る。違う?」


千鶴が結衣を真っ直ぐに見据えた。その言葉に、結衣は頷き、二人は再び走り出した。