結局、何も無かったという結論に至り、首都を離れる事になった。


明後日からまた高校が始まる成二は、ホッとしたり残念だったり、相反する思いが複雑に絡み合ってるようで、あまりパッとしない表情だ。


出発が夕方だった為、政都に向かう間に空が黄昏を迎え、闇に染まる。


空には月が輝いて、闇の色が若干褪せていた。


多香子の愛車・真っ赤なフォルクスワーゲン・ビードルのサンルーフ越しに見る月を見て、一つの名が頭に浮かんだ。


「…葉月」


ぼーっと空を眺めていると、運転席と助手席から2つの視線が降り注ぐ。


「成二って、葉月ちゃんがタイプなんだ?」


「あら、そこら辺の事…ゆっくり聞かなきゃ…ね、姉さん?」


「…違うよ」


―――しまった…


別に葉月を好きだとかそう言う事では無くて。


単に月を見てたら…とは言ったところで何もならないだろう。


「はるかもその気みたいだし、モテるねぇ」


「本当にモテるわねぇ」


姉2人の暴走に逆らうのは至難の技なので、とりあえず流す事にした。


東京までの道のりは険しい。


そう思うと、疲れがどっと出て来た。